安南婦人容態三つ                S17 3月21日

 

 さてPicture6~は彼らしい絵が続きます

 

 安南、つまりベトナムなのですが、船中 とあるので船の中で描いたという

 ことなのだと思いますが

 

 「ビルマ方面への兵輸送の多くは、上海・台湾に寄港して、
 仏印の聖雀(Cap St. Jacques 現・ブンタウ)や西貢(サイゴン)郊外から上陸。
 サイゴンからメコン川を上ってカンボジアのプノンペンへ、
 プノンペンから陸路でバンコクへ。バンコクから泰緬鉄道でビルマのモールメン(現・モウラミャイン)へ。
 モールメンからビルマ各地へ赴いたそうです。
 ちなみに記録によれば、第56師団(龍部隊)工兵56連隊は
 昭和17年3月2日に仏印サイゴン上陸、3月10日にサイゴン出発、3月26日にラングーン着となっています。」
              (※この部分、調査結果をお送りいただいたので追記しました。ありがとうございました)           

 

 町で見た婦人を思い出しながらスケッチしたのか

 彩色したのか……

 

 昭和17年3月21日 とあるので

 Picture3~5にかけての 一連の船の絵シリーズと日付が同じ頃です。

 船上警備の絵と同じ日に描かれています。

 

 

 サイトの最後のほうに載せましたが、サイゴンのシクロの図 という絵が

 あります。

 

 

 

 


カチン族の男         S17 6月18於 ラーショー ナムカム

 

 彼の絵にたびたび登場する中国少数民族

 カチン族 

 

 目のように見えるのは 飾りのようです。

 

 カチン族を検索すると、民族衣装にたくさん銀色の丸い飾りが

 取り付けられているのですが、大変綺麗です。

 

 このサイトを作るにあたって、中国少数民族について知ることができました。

 ミヤザキが転戦したルートは ミャンマーから東方の山岳地帯を

 抜けて中国雲南省にいたるので 少数民族の土地にあたります。

 

 この絵は カチン族 と書いてあるのですが

 中には書いてなくて わからない民族の絵も。

 

 今回、調べてみて驚いたのは、少数民族の

 彼らの住む村の美しさです。

 

 どこかとても懐かしい雰囲気の 素朴な屋根が連なる村々。

 美しい民族衣装。

 言語や風習、宗教などそれぞれ異なっているようですが、

 大変惹かれるものがあります。

 

 少数民族は歴史的に困難な道のりをたどっていることが多いですが

 カチン族は今もミャンマーとの間で難民化しているようです。

 

 ラーショーは、ミャンマーの東北部にある、前述のビルマ公路の要衝で

 ここから雲南省に向かって軍事道路が作られていました。

 ナムカムと書かれているのですが、ラーショーからすこし 東に行ったところにある

 町の名前です。

 

 

 

 


カチン族の母             S17 6月18日 於 ラーショー

 

 この絵も 同じ日に描かれたカチン族の母。

 この日はカチン族の方々と会う機会があったのでしょうか

 

 民族衣装を着ていますが、どこかたくましさを感じる母の絵です。


ビルマ族の娘              S17年6月18日 於ラーショー

 

 この6月18日は 彼は村に出かけて行ったのか 村人達の絵を何枚も

 描いています。

 ビルマ族の娘が 髪を結っている図なのですが、

 (そう書いてあるように見える)

 どういうシュチュエーションなのかは 不明です。

 

 ただ、このサイトを作るに際して、ビルマ戦線のことを調べたら

 ビルマは、日本と最初協力関係にあった、

 義勇軍を結成していたのだということ。

 (のち、日本とは敵対関係になっていきます)

 

 ミヤザキが ビルマに赴いた頃は協力関係にあったということに

 なります。

 ビルマは上座仏教の国。

 村の寺院が中心となっており、

 僧が村の指導的役割を果たしていたようです。

 

 ミヤザキは 戦線に先立って架橋や、道路の建設の任務についていたこと

 からして、村々に入っていって 協力を要請したであろうこと

 が推察されないでしょうか?

 

 少数民族の人々やこのビルマ族の娘の絵も 

 そうした折にスケッチしたのではないか?

 と思いました。

  

 

 

 


雲南の宿                     於 龍陵

 

 

  この絵は 他の何枚かとともにウチにあった絵なので

  見慣れていて懐かしい絵です。

 

  タイトルがついていて 雲南の宿 とあります。

  場所は 龍稜。 今は 竜稜 と表記するようですが

  雲南省にある地名です。

 

  この絵あたりから、雲南省に入っていくのですが、

  ミャンマーと雲南とは 川を隔てて行き来できる場所もあり

  お隣という感じのようです。

  少数民族も ミャンマーと雲南、タイあたりまでまたがっている民族も

  あります。

  

  洗濯物がさがっている 素朴な昼下がりの光景

  ヤシの木が南国を感じさせます。

 

  私、時々思うのですが、

  洗濯物を干すというのは、世界中どこに行っても普遍の

  人間の営みだな、と。

  人種、貧富、関係なく 古今東西、普遍の光景なのではないかと。

 

  ちょっとした空き時間、ミヤザキの心を捉えたのは

  戦争とは無縁の 日々の営み、素朴な暮らしだったの

  でしょうか?